プロジェクト概要
9月1日,ゲームエンジン「Unity」シリーズを開発するUnity Technology社が「Unity Mobile Generation Education project」を発表した.これは世界各地の教育機関を対象としたもので,Unityを使った授業計画を募集し,優れた提案を行った教育機関には有料版のUnity開発環境(Unity Pro v3.0, Unity Android Pro v3.0 Pre-release, そしてAndroid OSを搭載したGoogle Nexus One)が20人分寄贈される.本記事では、この公募が目指す次世代教育について解説する。
背景
現在,多くのゲーム開発者教育はモバイル機器やタブレットPC向けの対応を進めている.そのためには教材の充実や教員育成が必要だが,多くのゲーム開発人材育成はデスクトップ機やコンソール機に最適化されていた.そのため,ゲーム開発者育成プログラムとモバイル開発者育成プログラムを統合できずに別々に教育しているゲームスクールも少なくない.しかし現在の学生が社会に出る数年後を考えるとき,両者を統合した教育プログラムにいまから着手しておく必要があるだろう.すると、モバイル環境でのより高度なゲーム開発,あるいはスマートフォンや電子ブックを含むマルチプラットフォーム対応のゲーム開発のお手本が必要になる.今回のUnityのプログラムがよくある教育機関向けの無料サービスと異なるのは,教育機関が2度の提出物で審査される点だ.審査の流れを見てみると、まず第一ラウンドで教育機関は新しい教育カリキュラムを提案する.そして選ばれた教育機関にテスト環境が配布され,それを使った一学期分の学習計画と20分間の講義サンプルビデオを提出する.その中から最終的に3つの教育機関が選出され,学生分の開発環境が寄贈され,翌年からの授業の経過を定期的にオンラインで公開する.
つまり,今回のプロジェクトの目的は,単なる教育機関向けツールのばらまき無料配布ではない.各地の教育機関が新しい授業デザインを競うことを企図している.(Unityに限らず)ゲーム開発情報はこれまでオンラインや書籍で流通してきたが,十数週間の限定された学習期間内で,予習復習や講義演習を通じてどのような目標に到達するのかという具体的な授業デザインについてはまだ十分な蓄積がなく、通常のソフトウェア開発の科目でゲーム開発をしようとするとまだハードルが高い.今回のプログラムを通じてすぐれた次世代のゲーム開発者育成プログラムが提案され情報共有されることが期待される.
予定されている日程
- 募集〆切 (2010年9月30日)
現在のカリキュラムの情報とともに,Unityを使った実践教育のカリキュラムの提案書を提出する - 第1ラウンド審査 (2010年10月18日)
Unityが20校を選出する - 開発キット発送 (2010年10月28日)
Unity Android Pro と Google Nexus One 携帯電話一式をUnityから20校に発送する - 第2ラウンド審査 (2010年12月18日)
科目のリーダー(講師,教員)はUnity Android Pro と Google Nexus One を検証し,一学期分の授業計画を完成させる - 再優秀校発表 (2011年2月1日)
3校(予定)に20人分の開発環境が贈られる
関連資料: Unityについて
Unityは無料版はダウンロードできる.また,各種の学習教材がオンラインで配布されている.Unityについては,先月に本ブログの親団体であるIGDA日本が「ゲームエンジン『Unity』の衝撃」セミナーを実施している(講演案内, 講演まとめ).また,CEDEC2010で開かれたUnityのスポンサーセッションも報道されている.
本ブログでも,学生のUnity利用について「世界同時多発ゲーム開発: Global Game Jam 2010 を振り返る」中編後編で言及している.
(ちなみにIGDA日本では,Unity以外にもゲーム開発環境に関する研究会・セミナーを開催している.現在でもオンラインで読めるものとしては,SIG-Indieの第4回研究会「Xbox360向けゲーム開発環境XNAにまつわるインディーズゲームシーン」(報道記事,講演スライド)がある.)
日本の大学がベスト20に残る
返信削除Great Education Giveaway Round 1 Winners (October 27 2010)
http://blogs.unity3d.com/2010/10/27/great-education-giveaway-round-1-winners/
上記Unityからのアナウンスによれば、第一ラウンドの先行が終了し、ベスト20に日本からの授業提案が残りました。東京工科大学の教職員からの提案です。
おめでとうございます。