2020年1月30日木曜日

ゲーミング障害の政治とゲーム開発者ができること

アカデミックSIG主筆の山根です.
 本記事では,WHOでのゲーミング障害の扱いに対するゲーム学界の対応を説明し,ゲーム開発者が(パブリックコメント以外に)できることを考え,Global Game Jam瀬戸内会場in香川について説明する.
 さて香川といえば県の#ネット・ゲーム依存症対策条例が話題だが,その出しにつかわれたのが「ゲーム障害(ゲーミング障害)」という概念である.世界保健機構(WHO)の国際疾病分類 第11版(ICD-11)で「ゲーミング障害(gaming disorder)」の分類が追加されることが決定され,有効になる前から政治的関心を集めている.本記事ではゲーミング障害に関するゲーム研究・ゲーム分野での議論をまとめてみたい.

ゲームと障害

これまでゲームと「障害」(discorder)についての学会報告といえば,「ゲームで障害を治療できるか」というゲームを積極的に応用する取り組みが主流だった.

2019年11月1日金曜日

ゲームデザイン大学教科書の到来 (付録: 『ゲームデザインバイブル』正誤表案)

アカデミック・ブログ主筆の山根です.
ジェシー・シェルによるThe Art of Game Designが今年の夏に『ゲームデザインバイブル 第2版』として、オライリージャパンから翻訳出版された.これはゲームデザインを学ぶ大学生のための教科書として執筆されて改版を重ね、現時点でのゲームデザインの最強の定番教科書である.これまで大学で使えるレベルのゲームデザイン教科書が入手困難だった日本のゲーム教育界にとって、本書の翻訳は江戸時代に『解体新書』が訳されたのと同様に、専門家だけでなく多くの人が新しい学問体系を知るきっかけになるだろう.本稿ではこの教科書(以下、本書)の紹介と今後の展望について述べ、末尾には付録として正誤表案を示す.

著者について

著者のジェシー・シェルは、数々の職を経験したあと、ゲーム産業とコラボレーションをする大学のパイオニアだったカーネギーメロン大学ETC(エンタテインメントテクノロジーセンター)に教育専門教員としてスカウトされ、全米トップの大学でゲームデザインを教えてきた.その他にも、過去にはIGDAチェアマンをつとめたり、自らのゲームスタジオSchell Gamesもたちあげて現在に至っている.
 彼がディズニーでVRアトラクションやオンラインゲームに取り組み、そこで出会ったランディ・パウシュにスカウトされた経緯はカーネギーメロン大学のYouTube講義『最後の授業』でも言及されている(パイレーツ・オブ・カリビアンVRのゲームデザイナ, BVW科目の後継として).そしてNHKのドキュメンタリーにも登場した.

2019年8月4日日曜日

DiGRA2019 in 京都 勝手にプレビュー(後編)


IGDA日本アカデミック・ブログ主筆の山根です.外部の視点から見るDiGRA2019プレビューの最終回は、Ritsumeikan Game Weekと国際交流について紹介したい.

2019年8月3日土曜日

DiGRA2019 in 京都 勝手にプレビュー(中編)

前編の記事では、2019年8月6日から京都で開催されるDiGRA2019国際会議について、本体のセッション以外のワークショップをプレビューした.本記事では、後編としてその後に発表された情報を日本でゲームに関わる方々にお届けする.

2019年6月7日金曜日

DiGRA2019 in 京都 勝手にプレビュー(前編)

DiGRAが再び日本で開催

DiGRA(Digital GamesResearch Association)の世界大会「DiGRA2019」が今年2019年8月に京都で開催される.
「今回はDiGRAの日本語ニュースが少ないなあ」と思われる方も多いかもしれない.たしかに初めてDiGRA世界大会が日本で開催された前回の2007年には日本語ウェブサイトをつくったり、非会員にも日本語ニュースレターを配ったり、CEDECと同時開催にして基調講演をCEDEC受講者特別価格で提供したりした.これは多くの国内関係者の尽力によって可能になった.

2019年3月17日日曜日

2019年プレビュー後編: 誰が教育者を教育するのか

新たな動向: 存在意義を発信する教育機関

ブログ主筆の山根です.前回の前編記事では、2000年代にデジタルゲームが学問の対象となり、一部の先進校だけでなく国際学会をあげて整備されてきた歩みを紹介しました.こうしてゲームが人生をかけて学ぶに値する学問になって、ゲーム開発者教育はこの先どこに向かうのでしょうか.まず考えられるのは、本ブログでもたびたび紹介してきたように、各国でゲーム研究を看板にした大学・大学院の競争が活発になる.この競争にもいろいろな評価基準があり、どれだけ人材育成予算を獲得したか(たとえば2019年2月、イギリスでは新たに60人のゲームAIの博士課程の大学院生を雇用すると発表した)、どれだけ大きな研究拠点を作ったか(フィンランドでは公立のCoE (The Centre of Excellence in Game Culture Studies)を設置した)、そして調査会社がつくったランキングの順位を競う競争(昨年の本ブログ記事でも紹介)もある.しかし、こうした競争だけでは学問の発展は説明できません.競争する一方で、ゲーム教育機関は国境を超えて同じ目標を掲げて足並みをそろえています.
 2019年は学問としてのゲーム教育機関がその存在意義を発信し、評価を受ける年になると考えています.この後編の記事では.今年2019年に開催されるイベントから新たな取り組みを展望します.