2023年1月16日月曜日

GGJ23プレビュー: パンデミック後の産学イベント(追記あり)

  世界最大のゲームジャムイベント,Global Game Jamが1月末から2月第1週にかけて開催される.本ブログではGlobal Game Jamの初期から報告を行ってきたが,本稿では直前プレビューを行いたい.

対面会場が帰ってきた

 

  GGJ23の日程は以下の通り: 1月28日10AM(米国太平洋時間PST,日本時間では29日午前3時)に開発するゲームのテーマ発表・基調講演が発表される.それらはTwitchで公開され,2月5日(現地時間)までの間に各会場で48時間のゲームジャムを開催する.会場によっては現地集合せずにオンライン開催する設定も可能になっている.このために各会場ごとに参加申込期限が異なる.最終日である2月5日(ハワイ会場の最終日は日本時間では2月6日)には,ゲームがオープンなライセンスでアップロードされ全世界に配信される.

公式ビデオ「What is Global Game Jam?」日本語字幕つき

  今年の大きな話題は,なんといっても各地の会場に集まることが解禁されたことだろう.GGJ20以来,パンデミックによりゲームジャム会場を開設するのが困難になり,GGJでもゲームジャム会場閉鎖やオンライン開催への移行が行われてきた.そしていよいよ今回のGGJ23では,コロナウィルス対策を行うことを条件に,オンライン開催だけでなく対面会場を開催できることが全世界に発表された.

GGJ23公式ティザー動画

 日本国内でも,2020年度に「不要不急の外出自粛」「夜8時以降の外出自粛」が実施されたことで各種ゲームジャムの開設が困難になり,オンライン開催に切り替わった.そのあいだ海外では外出制限区域以外でソーシャルディスタンスを保って屋外で開催されるゲームジャムもあったが,それでも以前のように数百人のメガ会場はみかけなくなった.日本で小規模なゲームジャムが開かれるようになったのはさらに遅れて2022年度からで,医師が常駐する地方会場開催のような試みがIGDA日本のライトニングトークでも紹介されている. そうした試みを経て,今回のGGJ23で全国各地でオンライン・オフライン会場が開設されることになったのは感慨深い(原稿執筆時点では,北海道から沖縄まで14会場).

国際化するGGJと東アジアからの貢献

 GGJでは主催者が立ち上げた非営利企業「Global Game Jam」も組織化され,米国法人の常勤スタッフだけでなく,国際ボランティアチームが結成されている.そしてこれまでGlobal Game Jamの会場をとりまとめてきた各地域のコーディネーターに加えて,全体のディレクター職も各地域から任命されている.我々と関係の深い東アジアからは,GGJ 2022-2023 Executive Committee にIGDA台湾のJohnson Lin氏が,GGJ Board of Directors にはUnity日本法人の大前広樹氏が加わっている. 特に大前氏はGlobal Game Jam 2011から参加して,Unityを使った学生とのチーム開発ふりかえりを共有してくれたので(IGDA日本勉強会GTMF 2011など)日本のゲームジャムシーンたちあげに大きく関わってきた.

GGJ23国内会場に向けて

 Global Game Jamの会場募集はまもなく締め切られ,多くの国内会場は公式ウェブサイト(英語)とは別に事前登録が必要であり,申込方法が会場ごとに違うだけでなく,申込〆切や開会式の日時も会場ごとに異なっている.国内会場も多様で,札幌市産業振興センター で開催される札幌会場(対面定員120人)や八王子の東京工科大学会場(オンライン定員100人)といった大会場から,お寺の畳の間で開催される瀬戸内会場,薪ストーブ小屋で開催される奥多摩会場(すでに募集終了)など,規模や施設もさまざまで,さらに英語でも参加できる第二言語ありの会場もあれば,日本語のみの会場もある.対面参加とオンライン参加を選べる会場もあれば,対面参加のみの会場もある.興味のある方は,さまざまな会場の個性を調べてほしい.

 オンライン勉強会を企画しているコミュニティもある.たとえばGGJ瀬戸内会場in香川を開催予定の岡山Unity勉強会は,2023/01/21(土)にゆるもく勉強会を開催し,その中でGGJ勉強会も開催予定だ.(GGJ瀬戸内会場の昨年の勉強会の録画は公開されている.今年は質問への回答中心になる見込み.)

(追記1) 1月19日(木)にも,IGDA日本でオンラインセミナー「Global Game Jam 2023 直前配信/日本全国の3D都市モデルを活用してゲームを作ろう!」が開催され,国土交通省が進める3D都市モデル「PLATEAU(プラトー)」のゲームエンジン利用についての講習が行われる.

またIGDA日本では,ボランティアスタッフ運営の日本語ウェブサイト新年会(1/21) ,SNSハッシュタグ#GGJJPなどで情報共有を支援していく. (GGJ期間中にIGDA日本のSIG-地方創生セミナー(2/03) も開催されるが,GGJと勉強会との両立も不可能ではない.希望職種アンケートを実施して事前にチーム分けを決めるポリシーの会場であれば,夜から遅刻参加できる会場もある.)

(追記2) 日本国内の会場がでそろったが,この他にも海外会場へオンライン参加する取り組みも行われており,たとえば京都コンピュータ学院専門学校では,学生が姉妹校のロチェスター大学のオンライン会場に登録している.

付論: ゲームジャム発の研究コミュニティ

 最後に,アカデミック・ブログの観点から,GGJ発の学術活動の話を. さらにGlobal Game Jamの研究者コミュニティが国際会議FDG2013で「Global Game Jam Workshop」を開催し,そこからうまれた国際会議ICGJが継続して開催されることで,GGJはゲームジャムのアカデミックな議論もリードしてきた.

 そうしたGGJ/ICGJの研究コミュニティがGGJ直前に入門書を出版した: Game Jams – History, Technology, and Organisation(2023).序文と後書きのPDFファイルは無料でダウンロードできる.謝辞には日本人の名前もあがっており,地域コーディネーターをつとめてきた九州大学の金子氏(Kosuke Kaneko)や研究活動をしてきたIGDA日本の山根(Shinji R. Yamane)の名前が載っていた(事前に本人への連絡が無かったので驚いた).ただし,貢献が掲載されたことを喜んでばかりもいられない.もしもゲームジャム研究に世代継承がなければ,個人が忙しくなったら途絶えてしまうだろう.パンデミック期間中に減少したゲームジャムでの人材育成や世代継承の機会を強化していくことが必要だろう. 

(山根信二)

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