以下の本記事ではまずGlobal Game Jam(以下,GGJ)の概要についてふりかえり,そして国内からの参加登録/開催地登録をする方法を解説する.「2日間でゲーム開発に挑戦したい」「ゲーム開発者の輪に参加したい」「プロトタイピング開発の経験を積みたい」「ゲーム開発研修の場を持ちたい」といった関心をもっている方は国内のGGJ会場でのゲーム開発や開発支援に参加して新たな経験を積んでほしい.
前回の Global Jame Jam 2010について
これまで本ブログでは,前回のGGJ 2010に関する記事を掲載してきた.いまでも予告編「Global Game Jam の目指すもの」,そして国内サイトを訪問した「前編」,海外の先進教育拠点を紹介した「中編」,産業面やソフトウェア開発手法を紹介した「後編」といった連載記事を読むことができる.ただし,これらの記事では本格的なゲーム教育の拠点に注目したために「GGJは英語が堪能でゲーム開発の訓練を積んだエリート校の学生が参加するものだ」と思われた方が多いようだ.これは誤解であり、実際には参加の敷居は低い。たとえば英語が苦手な参加者も会場で他の参加者に尋ねれば問題ないし,作品紹介は英語で書くとしても世界各地の発表会場では自国の言語でストリーミング中継を行っていた.またゲームの専門家ばかりが参加しているわけでもなく、たとえば開催会場がゲームと映画を教える学校の場合、ゲーム開発には参加せずに開発風景を撮影するスタッフの参加もあった。
GGJ2009での各地からの動画メッセージをつなげた作品(Boing Boing Video):
前回のGGJ2010では,世界各地の139ヶ所の会場にプロ・アマ・学生にまたがるゲーム好き4,000人が集まり,900作品以上のゲームが完成までこぎつけた.国内の報告としても、国内最大のゲーム開発者カンファレンス「CEDEC2010」でも.ノンジャンルトラック(東京工科大による開催報告),ポスター発表(九州大学の院生による海外Global Game Jam参加報告),アカデミックトラック(筆者による国際動向比較),と異なる3つのセッションでGlobal Game Jamについての報告があった.また「ぜろじげん開発者ブログ」では同人サークルによる参加報告も見ることができる.
GGJ2010で最大規模のコペンハーゲン会場(300人参加)を取材した番組:
Global Game Jam 2011 の参加資格
次に,参加方法について説明しよう.参加希望者は開催会場リストの中から開催期間中に自分が通える会場をさがし,個人単位で自分の得意分野と希望会場の登録を行う.そして当日会場で即席の開発チームを結成して,限られた時間のなかでゲーム開発を行う.この手順だけを見るとGGJはプロ級のゲーム開発者が集まるような印象を受けるが,参加に制限はなく,誰でも参加できる(FAQ「GGJはプロじゃなくても参加できすか?」参照).コンピュータを使えるスキルはあった方がよいが,ゲームデザインやアートなど,コンピュータを使えなくても参加できる職種もある(FAQ「GGJに参加するために特別なスキルは必要ですか?」).したがって,参加申込を行う時には,自分が参加できる分野や得意なスキルをあらかじめプロファイルに書き加えておこう.GGJ2011の現状
この記事を書いている11月5日にも次々と各地の会場が告知されている.その様子はGGJのツイッターアカウント@globalgamejamでも配信されており,各国のゲーム人材拠点が並んでいる.たとえば前回レビューでとりあげた有名校だと,ボストンのマサチューセッツ工科大学のSingapore-MIT GAMBIT Game Labは昨年もボストン近郊のゲーム企業の開発者40人が参加したが,今年も40人の定員で外部参加者を募集している.
日本からは昨年に続き東京工科大学(Tokyo University of Technology)が参加制限なし(open to anyone),参加費(Entrance Fee)無料で開催地登録を済ませている(日本語ページも参照).この他にも参加を検討している国内グループがあり,本ブログでもニュースがありしだい追記していきたい.
参加登録の方法
参加登録は簡単で,GGJのウェブサイトから新規アカウント作成(Create new account)を選択し,希望するユーザ名と連絡用メールアドレスを登録する.しばらくすると有効期限つきのパスワードがメールアドレスに送られてくるので,ログインしてパスワードを再設定する必要がある.パスワードを設定すれば,あとはいつでもログインできるので,空いている時間にプロフィールを入力したりWikiページをチェックしておくとよいだろう.GGJのウェブサイトは全世界のゲーム開発者や開発者の卵を対象にしているために平易な英語で書かれている.しかしその中でも例外的に読みにくいのが,ユーザメニューの「License Agreement」にあるライセンス条項の説明だ.これはGlobal Game Jamの参加者がダウンロードしてプレイできるように,作者は作成したゲームにCreative Commonsライセンスをつけて提出する指示している.このライセンスの種類はバージョン3.0の Attribution-Noncommercial-Share Alike と呼ばれるもので,日本語版はクリエイティブ・コモンズ・ジャパンから「CCライセンス3.0 表示-非営利-継承(BY-NC-SA)」として日本の法律用語にあわせた翻訳や解説を読むことができる.
開催会場登録
学校だけでなく,企業の会議室,研究機関の研究室など,自前の会場を Global Game Jam の会場として登録し、ネットワーク中継することもできる(FAQ「会場は大学が多いようですが...」参照).こうした自前の会場を登録するには,アカウント登録のあとにサイト(会場)登録を行う必要がある.会場登録についてはGGJウェブサイトの記事「Apply for a GGJ 2011 Jam Site!」でも説明されているように,ログイン後のメニューから"APPLY FOR: Jam Site 2011"を選択し,入力フォームに必要事項を記入して審査を受ける(必要事項を明記していればたいていはそのまま受理される).ほとんどのサイトでは事前登録制をとっており,注意事項(Notes)の欄に事前登録方法について説明している.どのような参加ポリシーにするか,参加費はどれくらいかといった事項は各会場の主催団体が決めることができる.
会場登録には,いくつか確認しておく事柄がある(FAQ「ジャムのサイト(会場)を提供するには何が必要ですか? 」参照).また,上記CEDECでの東京工科大学での開催報告も参考になるだろう.本稿でもいくつかの注意点をあげておく.
- まず,週末でも使えるコンピュータ環境が必要だ.たとえば週末に暖房が止まる部屋は会場には使えない.会場は 必ずしも48時間ずっと開放する必要はないが,管理上の問題で夜間に施錠しなければならない施設では,事前に開場時間帯を明示しておくべきだろう.
- 最低一人は公式の運営責任者を登録する.これは主催者の代表者ではなく,期間中は常時連絡がつく人物を立てる必要がある.
- 会場規模は,単に最大収容可能人数で見積もるのではなく,全員がインターネットにアクセスしながら作業できるリソースを確保する必要がある.また当日会場にノートパソコンを持ち込んでもネットワークにつなげないと作業できないので,当日は参加者が会場LANに接続するための技術サポートも必要だ.
- 言うまでもないが,週末に近所で食料調達できる場所や飲み物の確保も必要.
- イベントの最後に参加チームが作品を発表して評価をもらうための発表会場とスケジュールを確保する.夜間使えない会場では、発表イベントが夜にずれこまないように注意する必要がある.
公式サイトでは11月15日までに登録作業を行うように推奨されているが,厳密な〆切ではない(FAQ「Global Game Jamの登録〆切はありますか?」参照.前回も直前になって出現したサイトがあった).本ブログでも,新たに参加する国内サイトを積極的に紹介したい.
スポンサー参加
GGJではスポンサーも募集している.これまでにUnity, Autodesk, Torque といったミドルウェア企業やゲームエンジン企業,あるいはファイル共有サイト,インディーゲームイベント,アメリカのゲーム業界のロビー団体(!)とさまざまな企業がGlobal Game Jamのスポンサーとなっている.スポンサーのロゴは公式ウェブサイトや公式Tシャツにロゴが掲載されるが、公式グッズは年内に印刷する予定なので,ロゴ掲載を希望する企業は急いで11月中に窓口にコンタクトしてほしい.また,各地のローカルサイトでは個別にイベントスポンサーを受け入れている会場もある.これには事前に運営担当者にコンタクトする必要ある。予告なしに手伝いや差し入れに行くのは、会場スタッフの作業や意思決定の手間が増えるので控えた方がよい.
新たな取り組み
以上,参加申込受付がはじまったGGJ2011について解説した.サイト登録を検討している組織は、ぜひ早目の登録をお願いしたい.英語サイトで不明な点があれば、IGDA日本や本ブログでも相談を受けつけている。またGGJ2011では,前回まで新たな取り組みとして,デジタルゲーム以外のゲーム開発や,自分の参加会場以外の開発チームへの参加もできることになった.これらの新機軸については続報であらためて紹介したい.
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