2011年3月26日土曜日

Google Summer of Code 2011: 夏休みのプログラミング奨学金

Google Summer of Code は,Google社がオープンソースソフトウェア開発プロジェクトを選定し,その開発に参加する学生に奨学金を提供する夏期プログラムである.今年もまた採択されたプロジェクトが発表され,世界各地の学生がプログラミングの腕試しとして応募先のコミュニティを巡回しているところだ.


これまでSummer of Codeの情報はFSIJなどのコアなプログラマ層にしか知られていなかったが,WordPressWikipediaでも日本語の説明が掲載され,ウェブ系のプログラマには知られるようになってきた.ではゲーム系はどうか.Googleに採択された団体の中には,ゲーム関連のプロジェクトも多く含まれている.これは昨年に本ブログ記事「オープンソースのゲーム開発とGoogleの奨学金 」で紹介したが,今年もその傾向は続いている。4月の〆切に向けて、数多くのプロジェクトが学生指導の担当者とテーマを決めて、Googleが提供するサービスを使って全世界からの学生からの応募を待っているところだ.

学生を募集しているゲーム関連コミュニティ

以下ではGoogle Summer of Code 2011 に採択されたコミュニティの中から,ゲームに関連するもので目にとまったものをリストアップしてみよう.昨年の記事で紹介したコミュニティも多いが,新顔もある.

それぞれのプロジェクトの募集テーマの傾向としては,ゲームAI関連の課題が増えたという印象がある.これはゲームAIが大学のアルゴリズム・プログラミング教育の課題と近く,新人リクルートと相性がいいという側面もあるのではないかと思われる.

コンタクトの際の注意点

申し込みの締切りまで,各コミュニティは学生からの質問に答えてくれる.開発者のコミュニティはみんな開発が好きで参加している人たちなので,企業のような新人教育担当者はいない.しかしSummer of Codeの募集期間中は,メンタ以外のメンバーにも学生からの問い合わせに丁寧に答えてくれる雰囲気がある.
ただし,今年は東日本の学生には震災の影響がある.授業開始が遅れ,いつから夏休みなのかはっきりしていない大学も多い.また計画停電も解消される見通しはない.しかしGoogleに提出する日程は動かせないので,本格的に開発に入る夏休みの時期が確定していない東日本の学生は,どうすればカバーできるのかを早めに開発者コミュニティに質問しておかないと,開発スケジュールを用意して応募してくる他地域の学生に抜かれてしまうだろう.

おわりに

ゲーム企業に就職することだけがゲーム開発者として活躍する方法ではない.世界にはボランティアによって運営されている大作ゲームやゲームエンジンも数多く存在し、学生でも多くの人が遊んでいるゲームの開発に参加することができるし、国際的な開発チームに入門することもできる.それらのゲームの全世界の出荷数や開発者人口は誰にもわからないが、Googleに採択される団体はその一部にすぎない(過去の採択プロジェクトで今年は採択されなかったものもある)。
ボランティア組織なので参加するのも脱退するのも各自の自由だが,これまではそうしたコミュニティには腕自慢のプログラマは集まっていても、広報担当や教育担当はおらず,学生には敷居が高かった.しかし企業から夏期限定の支援をえたことで,多くの注目を集めることができ,開発者コミュニティと学生にとっては、経済的なメリットだけではなく誰がどんなテーマで開発者を求めているのかが見えるというメリットもある.
一方、ゲーム企業も,腕自慢の学生にアピールするGoogleの活動をただ眺めているだけではない.たとえばコペンハーゲンのUnityでは,自社プロジェクト「Unity Summer of Code」を2009年に実施した.今年の開催についてはまだ明らかではないが,その成果の一部はUnityの最新版にも取り込まれている。もともとUnityはMonoプロジェクトのオープンソースソフトウェアをうまくとりいれてきたが,オンラインのコミュニティの支援や育成を通じて自社製品を向上させようという戦略は注目したい.

1 件のコメント:

  1. 「Summer of Code 2012」はじまりました
    http://japan.internet.com/webtech/20120208/2.html

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