ACM(全米計算機学会)のSIG(分科会)の一つ,SIGGRAPHが毎年夏に開催する年次大会は「CGの祭典」とも呼ばれている。過去には日本のゲームタイトルのムービーが入選したこともあるし,テレビ番組でも紹介されてきたので,ゲーム産業以外の方々も聞いたことはあるのではないだろうか.映画祭のようにも見えるが、その本体は学会による成果発表の場である。
SIGGRAPH Asiaは,そのSIGGRAPHの名を冠した暖簾分けイベントである.本家SIGGRAPHに比べれば規模は小さいが,入選作品は過去の文化庁メディア芸術祭でも無料上映されてきたし,日本での開催に先立ちCEDEC2009でも紹介されている.
今年夏のSIGGRAPH 2009については本ブログでも簡単に触れたが,SIGGRAPHは今年からゲーム関連の枠を増やし,さらにウィル・ライトを招待講演に招いてゲームを柱の一つにするという改革を行った.それに対して冬のSIGGRAPH Asia 2009では,委員にゲーム関連の人がおらず,CGやVR中心に見えるが,プログラムが発表されるとゲーム関連のセッションが予想外に増えていた.しかも近年成長しているアジア各地のゲーム拠点からの発表ではなく,日本人による日本のゲームに関する発表が多い.これは日本のスタッフの努力によって実現できたものだろう。
SIGGRAPH Asia 2009の関連プログラムから,日本のゲーム関連で目についたものを以下に紹介する.
12/14-15:
- VRCAI2009
SIGGRAPH Asia 2009の直前の2日間(12月14、15日)に、東工大すずかけ台キャンバス(横浜市緑区)で開催される関連会議です(参加費は別).タイトーのアーケードゲームについての招待講演が予定されています.
- 午前中(9:00--12:34)に日本語でのセガのゲームプログラミングの講習があります.
- 午後にはプライベートイベントとしてAutodesk dayも開かれています(参加費無料).
- エデュケーターズプログラム: 教育論文: ゲーム (12/17 Thursday, 9:00AM--10:00AM, 4:15PM--6:00PM)
本家SIGGRAPHでは,IGDAと連携してIGDA Academic Summitをひらくなど,高等教育へのゲーム開発の導入と相互評価を行ってきました.この場に日本の大学が登場するのははじめてではないかと思います.(4年制のカリキュラムを開発している大学は他にもあるが,それを世界に発表して相互評価を受けることはなかった).
なお,東京工科大学とプレミアムエージェンシーについては,2007年時点のヒアリングがデジタルコンテンツ協会報告書に掲載されています. - Special Session: 「日本のビデオゲーム開発の現場では今何が起きているか?」 (12/17 Thursday, 2:15PM--4:00PM)
プログラムには率直な日本のゲーム開発の現状が書かれていますが,海外の参加者にはどのように受け取られるのか興味があります. - エレクトロニックシアター(12/17, 19:00--21:00他)
今年はBest Technical Awardがゲームタイトルに対して授与されます.これはゲームが高度な技術を発揮する場となっている現状をよく表していますが,受賞タイトルが「アサシンクリード2」というのがCGの祭典らしいところでしょう.
- ワークショップ: セガの社内トレーニング (12/18 Friday, 9:00AM--12:00PM)
海外では学生向けの企業説明会から社員の継続教育まで大学と共同で実施する企業も多いですが,一社で全部やっているのがすごい. - Special Session: "Beyond Just Gaming: Playfulness as a Design Driver for Mobile Applications""(12/18 Friday 9:00AM--10:45AM)
- ジョブフェア (12/17-19)
英語フォームに入力する必要があるが,自分の経歴やデモを事前に登録して参加企業の採用担当者とコンタクトをとれる.
- 出展者トーク『若者は本当にロボットに人生を懸ける意義があるのか?!』(12/19 Saturday 12:15PM--2:00PM)
経済産業省のプロジェクトの発表.コンテンツとロボットという意表を突く組み合わせもさることながら,アトムやガンダムが何十年前にヒットしたのか知らない海外からの参加者が,日本が強い(と言われている)ロボットの意義をどのように見るのか興味深いものがあります.
出展者によるトークはこの他にもPixarやLucasfilmに加え,NVIDIAやIntelといったハイパフォーマンスコンピューティング系の人にも興味深い発表も予定されています.
参加費が少々高いですが,首都圏でこれだけの発表が開かれることは滅多にありません.日本語プログラムもダウンロード可能です.
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