2010年1月3日日曜日

大学のゲーム講義をダウンロード

大学講義や教材のオンライン化はこれまで多くの大学で行われており,さらに最近は講義を「YouTube EDU」や「iTunes U」でも提供する大学も増えてきた.そこで本稿では,ゲーム研究に関する講義や教材(または詳細なシラバス)を公開している大学をピックアップして紹介する.

東京大学

大学院情報学環で公開されている講義の中で,ゲームについて触れている回がある.



名古屋大学


講義ビデオはないけど,シラバスが公開されている.

マサチューセッツ工科大学 比較メディア研究科

MIT Department of Comparative Media Studies の公開科目リストから, "Computer Games and Simulations for Investigation and Education", "Videogame Theory and Analysis", "Game Design" などの科目にリンクされている.
また,外部の研究者を招いて行われる講演シリーズがCMS Colloquium Seriesとしてポッドキャストで公開されている.ゲーム研究者の一例としてはJesper Juulのポッドキャストや動画がダウンロードできる.

スタンフォード大学

デューク大学

アルバータ大学(カナダ)

ゲームAIの研究拠点がある.理学部コンピュータサイエンス学科の授業はアクセス制限がかかっている科目が多いが,一部の科目,たとえば大学院生向けの授業CMPUT 652 - Winter 2009 - 「Single Agent Search」は全スライドと課題が公開されている.
この科目はシラバスだけを見れば基本的なアルゴリズムを学ぶ科目に見えるが,DijkstraアルゴリズムやA*アルゴリズムといった正統的な内容から出発しながら,後半では講師の先生が実装したパス検索のゲームエンジン(BioWareから製品化されたDragon Ageで使われている)が題材になっている.第1回のスライドには「学会で注目されるような先進的な授業をやる」という講師の野望が書かれているが,狙い通り最先端のゲームエンジンを扱いながら正統的なコンピュータサイエンスをマスターする野心的な科目だと言える.

カリフォルニア大学サンタクルーズ校(UCSC)サンタバーバラ校

コンピュータサイエンス学科では,コンピュータサイエンスとゲーム開発とをミックスさせた科目が多数開講されている.たとえば"Computer and Game Console Architecture", "Game Design Experience", "Foundations of Interactive Game Design", "Creating Virtual Worlds on the Web", "Game Engines", "Distributed Systems", "Interactive Narrative"など.

その中でも注目の科目は,AiLive社John Fungeが講師を勤めているGame AIだろう.公開されている各週のスライドでは,「シーマン」から機械学習まで広い範囲を扱っている.この講座は2009年度は開講されていないようだが,教科書Artificial Intelligence for Gamesはそれまでの講義の成果を元にした第2版が2009年に出版された.

タンペレ大学(フィンランド)

DiGRA初代会長のFrans Mäyräが執筆した教科書については以前に紹介したが,あらためて紹介したい。授業で使ったり自学自習のためのスライドまでウェブサイトGameStudiesBook.netで公開されている.ビデオこそ公開されていないが,一つの科目でゲームの歴史的な話から現代のARやmixed realityまでカバーして,さらに自分で研究を深めるための手引きも含んでいる充実した内容である.

その他の機関

今回紹介した教育機関は一部にすぎず、教育内容を公開していないゲーム研究機関は数多く存在する.たとえば,USC(南カリフォルニア大学)UCIGamePipe Laboratory,NCStateのDigital Games Research Center,UC IrvineのCenter for Computer Games & Virtual Worldsなど.また、いくつかの講義はすでに歴史的価値を持ちはじめている.たとえばカーネギーメロン大学ETCのRandy Pauschが1999年に行った講義"The Interdisciplinary Challenge of Entertainment Technology"は,10年以上も前に研究教育センターを設立した先見性を伝えるものとしていまだに古くなっていない.

まとめ

以上,大学で開講されているゲーム研究教育の中で,オンラインで参照可能なものを挙げてみた.これらを見てもわかるように,各地の一流大学でデジタルゲームについて学ぶ科目が開講され公開されている.そしてそれらの科目番号を見ても,CMS(比較メディア研究),CS(コンピュータサイエンス),IS(情報科学),HCI,映画研究,STS(科学技術社会論)などいろいろな分野にまたがっている.さらに、当時まだ発売されていなかった商用ゲームタイトルのアルゴリズムを教材にする先進的な授業も存在した。今後もそれぞれの学習内容の個性化を進めつつ、同時に外部から研究者を招くなどして内容の共通化も進んでいくことだろう。
日本の留学情報誌でもゲーム開発を学べる海外の大学が紹介されているが,こうした先進的な教育への取り組みは体系的なゲーム研究開発に関心を持つ学生だけでなく,ゲーム産業界の関係者にとっても刺激になるだろう.この他にも興味深い公開情報があればぜひコメントを寄せていただきたい。

1 件のコメント:

  1. UCSC, USCの大学名をまちがえていたので修正しました。

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