今春もIEEE, ACMといったメジャーな学会の公開記事からゲーム関連の記事を紹介します.昨年はシリアスゲームが目立ちましたが,今年は大学でのゲーム教育やAR関連の記事が目を引きました.
Communications of ACM
最大最古のコンピュータ学会,ACMが毎月会員に配布している会誌がCommunications of ACMです.その2009年12月号がコンピュータサイエンスの教育改革特集で,ゲーム関連の記事がいくつかあります.アメリカでのコンピュータサイエンス教育の中で行われるゲーム教育について調査分析したKelvin Sungによる"Computer Games and Traditional CS Courses",そしてAmerica's Army開発を指揮した後,南カリフォルニア大学でゲーム学専攻をたちあげた Michael Zyda による"Computer Science in the Conceptual Age"の2編は特にゲーム教育を真正面から論じています.この号全体をPDFでダウンロードすることも記事毎にダウンロードすることもできます.IEEE Pervasive Computing
「ユビキタス社会」はかつて自民党政権の「u-Japan」という政策名にもなりましたが,IEEEでその分野を扱っているのがこの季刊誌Pervasive Computingです.誌面はコンピュータチップから社会面まで幅広い内容を扱っていますが,2010年1-3月号では巻頭記事"Gaming and Augmented Reality Come to Location-Based Services"という記事で位置情報SNSやAR技術について扱っています.これらの記事から、アメリカの大学の一部ではゲーム開発を通じてコンピュータサイエンスや高度なソフトウェア開発を学ぶコースが増えていることがわかります。IEEE Computer Graphics and Applications
IEEE Computer Graphics and Applications(IEEE CG&A)は,IEEEの出版物の中でも特にCGを扱う隔月刊の会誌です(昨年の記事ではシリアスゲーム特集を紹介しました).2010年1-2月号では"CancerSpace: A Simulation-Based Game for Improving Cancer-Screening Rates"という記事が掲載され、再びゲームのリアリティ表現と応用がとりあげられました.論文誌と会誌との違い
本記事で紹介したのは,ゲームの専門家のための最前線の論文誌ではありません.ゲーム以外を専門とする学会員にも配布される読まれる会誌であり,むしろ専門外の学会員向けに書かれています.専門論文誌を「ジャーナル」,会誌を「マガジン」と区別して呼んでいる学会もありますが,これはマガジンの記事がレベルが低いというわけではありません.専門家と編集者によるチェックがはいっているのはどちらの学会出版物でも同じです.
専門領域が高度になるにつれて,他の分野のことを知るのはますます困難になっています.その一方で,実社会では他の分野の専門家とコラボレーションする必要に迫られます.そこで専門分野の取り組みに光を当てながら広い読者を想定した記事が求められています.また,単なる入門記事ではなく,さらに詳しく知りたい人は誰の記事を読めばよいのかを引用して示していることも多いので,興味のあるかたは今後も公開記事をチェックしてみてはいかがでしょうか.
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