2011年1月5日水曜日

IGDA Education Connect: IGDAの2011年の新たな取り組み

アメリカのIGDA本部では,2010年から新体制になり,これまでの組織の見直しを行っている.アカデミック分野でも,これまでボランティア主体でやっていたプロジェクトが職員が担当する公式なプロジェクトになるといった変化が起きている.
この変化は,これまで基本的に開発者個人を支援する団体だったIGDAが,公共教育における社会的な役割を求められていることも意味する. 以下,本記事では2011年に新たに告知されたIGDAの取り組みについて紹介したい.


これまでのIGDAのアカデミック活動

2010年までのIGDAのアカデミック分野の活動としては,
  • カリキュラムフレームワークの策定と更新(Education SIG)
  • Global Game Jamの開催(Education SIG, 各地の支部)
  • ゲームの歴史資料保存に関する国際協調(Preservation SIG)
  • GDC/SIGGRAPH/DiGRAなどの国際会議との協力(各SIG)
  • 各SIGによる白書の作成(それぞれのペースでGDCなどで発表)
といった各SIG(専門部会)での活動をあげることができる.これらは世界各地の会員個人個人のボランティア活動をIGDAが運営面で支援する形をとっており,中には10年近く続いている活動もある.
特に「IGDAカリキュラムフレームワーク」は,専門学校から大学院まで教育カリキュラムの中にゲーム開発をとりいれようとする際に必ず参照される枠組みとなった.日本語訳も「デジタルコンテンツ制作の先端技術応用に関する調査研究報告書」の付録として公開されている.

IGDA Education Connect

今回,IGDAのウェブサイトでIGDA Education Connectが2011年の新たな取り組みとして告知された.これは従来の各SIGの活動ではなく,IGDA事務局が運営する公式なプログラムである.このプログラムは学生を対象にした IGDA Student Club と 学校を対象にした IGDA Education Partner の二つから構成される.以下に紹介しよう.

IGDA Student Club

IGDA Student Clubは,開発者個人ではなく開発者の卵をターゲットにした取り組みである.
これまでIGDAはゲーム開発者を志望する学生個人に対していくつかのプログラムを実施してきた.たとえばIGDA学生会員向けのプログラムとしてIGDA GDC Student Scholarships(学生奨学スカラーシップ)を設け,カンファレンスに参加したりプロや学生同士の話ができる機会を提供してきた(今年の申込〆切は1月6日(現地時間)).また学生会員に限らず,プロ,アマ,同人・インディを問わず,すべてのゲーム開発者がコラボレーションの機会を持つことを狙ってGlobal Game Jamを全世界で展開してきた.
IGDA Student Clubではこうした従来のイベント活動から,継続的なサークル活動に近い形態へと展開することが期待される.国際学会ではこうした各校の学生コミュニティを形成する動きは珍しくない.たとえばIGDAのGlobal Game Jamに協力している国際学会ACMではACM Student Chapterという地域単位の学生会をつくったりACM国際大学対抗プログラミングコンテストを開催して学校ごとのコンテストも実施している.またIEEEではIEEE Student Branchが日本国内のいくつもの大学で活動している.Global Game Jamに世界各地の大学・専門学校・インディーゲーム集団が参加している現在,IGDAも各地の教育コミュニティ形成に向かうのは自然な流れだろう.

IGDA Education Partner

IGDA Education Partnerは,学校組織を対象にした取り組みである.これは全米だけでも254校でゲーム開発やゲームデザインを学んで学位や認定証を授与されるコースが存在するようになった現状に対応した再編成だと筆者は考えている.
過去にIGDAでは「IGDA Academic Summit」をGDCやSIGGRAPHのセッションとして開催し,ランディ・パウシュら各学校のアカデミックリーダーの取り組みを共有する場所を提供してきた.この取り組みはIGDAカリキュラムフレームワークという形でまとめられ,現在もアップデートが継続している.
こうしてゲーム教育のカリキュラムを整備したり立ち上げイベントに協力する過程で,各地域のIGDA幹部は各校のリーダーとパートナーシップを築いてきた.その一方で,もはやボランティア頼みの活動を越えた仕事になっていたことも否定できない.正式なゲーム教育のカリキュラムや学位プログラムがテイクオフした現在では,IGDAと学校との組織レベルでのパートナーシップの方がサステイナブルだろう.

まとめ

各SIGや各支部によって進められていた教育関連のプラットフォームを本体が担うと見ることもできるが,現在はアナウンスが出たばかりで,詳細については動かしながら詰めていくことになる.その経過,IGDAのニュースレターや,3月のGDCでのIGDAセッションやGDC 2011 Education Summit,また9月のDiGRA 2011でも話題になるだろう.(余談だが,今回のGDC2011は25周年ということでGDCの過去の歴史を編纂する取り組みも進められており,GDC立ち上げに関わったIGDAの歩みを振り返ることにもつながるだろう.)
2011年のIGDAのアカデミックな活動はGlobal Game Jamにはじまり,IGDA Education Connectによる組織化へと向かう.この取り組みを通じて,ゲーム教育に組織的に取り組む拠点形成が促進されるだろう.
総合芸術であり総合科学でもあるゲームを理解しようとすると,いまや数年間の体系的な教育プログラムを組むことは避けられない.今回の新たな取り組みを通じて,草の根団体であるIGDAが各地の教育研究機関とより積極的なパートナーシップを組めることを期待している.

2 件のコメント:

  1. GDC11のセッションとして開催されたIGDA Annual meetingにて「IGDA Road Map 2011」が発表されました。説明資料はオンラインでも公開されています。
    http://www.igda.org/RoadMap2011

    IGDAはボランティア組織なので、2011年のロードマップも他団体とのパートナーシップによる活動がほとんどを占めています。このロードマップ発表資料の中でもIGDA Education Connectについて説明されています。

    なおIGDA Annual meetingについてはツイッターでも報告がありました:
    http://togetter.com/li/108120
    参考までに

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  2. IGDA Education Connect のウェブサイトがリニューアルされ,今年度は「IGDA Student Chapter」(IGDA学生チャプター)設立を進めることが明確になりました.
    http://www.igda.org/education

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