日本国内でも,東京工科大,東京工芸大,神奈川工科大,大阪電気通信大,立命館大学などが単発の講義にとどまらない体系的な教育に着手しているし,多くの専門学校が4年制のカリキュラムを設置して高度な教育に取り組んでいる.しかし,どの学校がどれだけすぐれた教育を行なっているのかは分からない.世界各地の大学でどれだけのゲーム専攻が新設され,世界の学生はどのようにして進学先を選んでいるのだろうか.
北米の大学・大学院
北米ではこの10数年間でゲーム教育のプログラムが整備されてきた(対談「10年間で大きく変化したアメリカのゲーム教育」参照).その結果,いまではゲーム専攻のある大学は珍しくなくなり,学校間の競争が進んでいる.たとえばアメリカのゲーム業界団体ESAによる2011年8月の発表によれば,アメリカ国内では2011年度に343のゲーム教育プログラムが実施され,ゲームデザイン,ゲーム開発,ゲームプログラミングで学位が取得できる.ここでいう学位には専門学校から大学大学院までが含められるが,さらにこの他にもゲームの学位を出さないゲーム研究機関を抱える大学も存在する(たとえばスタンフォード大学は大学図書館にゲームコレクションと研究者を抱え,ゲーム開発に関する各種の授業も開講されているが,ゲーム専攻の学位を授与しないためにESAのリストに載っていない).
さらにESAは大学院課程が42校に増えていることも指摘している.こうした大学院は(ゲーム業界へのインターンシップ契約も結んでいるが)たんなる職業訓練校ではない.本ブログでも紹介したランディ・パウシュの『最後の授業』で描かれているように,全米トップの科学者と産業界が協力して最先端の人材を育てようとするものだ.
日本と北米で差がついているところはこの高度人材育成の部分であり,CEDEC2010でも「日本にはゲームに関する修士プログラムがない」「専門学校生が教わっている内容のレベルがあまりに低くて驚いた」「欧米ではゲームデザインは学問(Science)です」と指摘されている.
大学教育を評価する
ゲームを大学で学ぼうとしたとき,受験生はこれら多くの大学からどこを選べばよいのだろうか.このブログの本家でもあるIGDAでは,ゲーム開発を教育にとりいれる学校に対する手引きとなる「IGDAカリキュラムフレームワーク」を作成してきた(過去のバージョンの日本語訳は「デジタルコンテンツ制作の先端技術応用に関する調査研究報告書」の付録として公開されている).しかし現在ではどの学校もIGDAの枠組みに準拠しており,カリキュラムを見ただけでは優劣をつけがたい.またゲーム業界誌Game Developer Magazineでは,別冊のゲーム業界キャリアガイドを毎年無料公開して教育機関を紹介している(2008年秋季号, 2009年秋季号,2010年秋季号,2011年秋季号).学生向けの入門記事も読めて大学の広告も比較できるが,やはりどの大学の教育がトップクラスなのかはわからない.
どこの大学が優れているのか分からないこうした状況で,大学ランキングが必要になる.アメリカの全国紙USA Todayでは,2010年からゲームデザインおよびゲーム開発の北米大学ランキングを毎年掲載している.
- "USC ranked No. 1 among video-game design programs" (2010年)
- "USC retains top spot among video game design programs" (2011年)
このランキングで2年連続で首位となっているUSC(南カリフォルニア大学)の教育プログラムは,映画学部のインタラクティブメディア部門と工学部のコンピュータサイエンス学科によって共同で運営されている.
(続く)
2012年版のランキングも出ました.
返信削除"USC still tops as video game design plays on more campuses". (USA Today, Mar 01, 2012).
-> http://content.usatoday.com/communities/gamehunters/post/2012/03/usc-still-tops-as-video-game-design-plays-on-more-campuses/1
-> http://usat.ly/wgDsMo#.T2sTgbXajWM
また,PrincetonReviewのページではランキングの算出方法も公開されました.
-> http://www.princetonreview.com/game-design.aspx