2012年1月29日日曜日

Global Game Jam 2012: 作品提出前の権利処理

誰もがダウンロードできるGlobal Game Jam作品

Global Game Jam はゲームをつくるだけのイベントではなく,自作のゲームを公開し共有する場でもある.
Global Game Jamの終了時には,すべてのプロジェクトはゲームをアップロードし共有しなければならない.(ただし,48時間を過ぎても開発を続けて,修正版を追加公開することもできる.)
それぞれのゲームはタグやアチーブメントごとに検索することもできる.たとえば,自分と同じタグをつけたゲームを検索してアプローチの違いを比較し作品をつうじて学びあうこともできる.
公式サイトにアップロードされた参加作品は,オンラインで全世界に公開される.誰もがそのゲームをダウンロードしてプレイできるし,参加者同士で点数をつけたりコメントをつけあうこともできる.そこで問題になるのが権利処理だ.

権利処理

では,Global Game Jamのゲームの権利は誰が管理しているのだろうか? Global Game Jamではゲームに関するすべての知的財産権は,製作した開発者(開発チーム)自身のものである. IGDAはたとえ主催者であっても,開発者の許諾なしにゲームを公開できないという立場にたっている.
そのために,Global Game Jam終了時に成果物をアップロードする際には,開発チーム自らがライセンス(利用許諾書)を提示するようにしている.このライセンスは開発者のクレジット表示や非営利目的利用といった制限の元でダウンロードや再配布を認めるクリエイティブ・コモンズライセンスだが,ライセンス文書を開発チーム自身に作らせるところにGlobal Game Jamの開発者育成に対するこだわりを感じる.作成手順は以下のとおりだ.

ライセンス(利用許諾書)の作り方

公式サイトにログインしたユーザには,サイドメニューに「License Agreement」へのリンクがある.このページは以下の4部構成になっている.
  1. 「Who owns the game? 」
    (ゲームの権利を持っているのは誰か)
  2. 「license.txt file」
    (利用許諾書となるlicense.txtファイルをゲームのディレクトリの一番上においてから,圧縮したファイルを提出する)
  3. 「License File Contents」
    (この節をコピーしてlicense.txtにはりつけ,ライセンスのテキストファイルをつくる)
  4. 「Explanation」
    (くわしい説明)
1は説明で,2,3が具体的な利用許諾書の作り方,4が詳しい説明だ.

ライセンス(利用許諾書)の提出方法

提出するゲーム一式をいれたディレクトリに上記の「license.txt」ファイルをつくったら,いよいよアップロードとなる.
公式サイトにログインしたら,ゲームプロジェクトにゲームをアップロードする方法は,
Hand-in Procedure(提出の手引き)に説明されている.
この手引きの内容は以下のとおり.
  • Hand-in Deadlines (all local times)
    (提出〆切の目安: 現地時間)
  • 1. Create placeholder Game Project
    (ゲームのソースコードや素材に利用許諾書をつけて,zipで圧縮して一つのファイルにする.)
  • 2. Upload final game
    (時間に余裕があれば,作成の手引きがあるのでゲームのプレイ動画も提出しよう.)
  • Upload for Digital Games
    (必要なものを整理する.もしもミドルウェア製品が必要な場合は,ミドルウェアのインストール情報をつける)
  • Upload for Board Games
    (デジタルゲームではなく,ボードゲームを提出方法.ボードゲームのプレイ動画もほしい.)
  • For non-English-speaking jammers
    (日本語ファイルしかない人は,日本語に英語の機械翻訳をつけて,2か国語化して提出しよう.)
  • Updates
    (あとから修正版を追加アップロードする方法.元のファイルは残す,などの補足説明.)
開発チームはこうしてライセンスをゲームに付与することで,名前を書き換えて配布する行為や商業利用行為に対して法的な権利を行使することができる.

ライセンス違反の回避方法

ここまで見たように,開発者自らがライセンスをつけてすべてのソースコードや素材をアップロードすることで,GGJではすべての作品を自由にダウンロードできるようにしている.
ここでよくあるのが「ネットで拾ってきた素材を使ってゲームを開発したが,実はその素材に利用制限があった場合」である.たとえば,もしも再配布を禁止していた素材を使ったら,ゲームファイルの一部としてアップロードすることができない.もしも「ライセンスを改変して配布してはいけない」という独自のライセンスで配られていた場合,クリエイティブ・コモンズのライセンスを付与してアップロードできない.
クリエイティブ・コモンズのライセンスで配布されている素材で「Attribution(帰属)」の制限があるものは,製作者の名前をゲームプロジェクトページの「Credits:」欄に記載する必要がある.
また,クリエイティブコモンズのライセンスで「商業利用可能(commercial)」で「Share Alike(同様に共有)」のライセンスがついていたら「商業利用可能」の条項を引き継いでアップロードせねばならず,GGJのクリエイティブ・コモンズの「非商用(Noncommercial)」条項と衝突し,使えない.
もしもネットで拾ってきた素材に利用制限があり,GGJのライセンスと衝突する可能性がある場合は,その素材を自作の素材にいれかえた修正版を出す,さもなくばGGJと同じクリエイティブ・コモンズの「表示 - 非営利 - 継承」ライセンスを使っている素材で似た題材のものがないかクリエイティブ・コモンズ サーチなどでさがすことになるだろう.

おわりに

GGJもいよいよ最終日,最後の提出の時は興奮していて権利処理まではなかなか気がつかないものだ.また各会場の担当者もIGDA日本もそれぞれの素材の条文チェックまでは手がまわらない.もちろん,オンラインライセンスは面倒そうだがアップロードページの「Credits: 」に記名するだけで利用できるような素材の活用は今後も大いに進むだろう.
また,開発チーム全体の同意がとれれば,GGJのゲーム一式に別のライセンスをつける「デュアル・ライセンス」方式も可能である(GGJ作品をマーケットに出品しているのはこのパターンだ).
GGJとともに「開発者の権利を開発者が守る」という文化が広がることを希望している.
GGJのゲームをどんどんダウンロードしてプレイしてほしい.

3 件のコメント:

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  2. GGJ14でも,CrestiveCommonsライセンスでの提出は変わりません.
    http://globalgamejam.org/legal-policies

    ライセンスを含めたアップロード方法については以下で具体的に指示されています.
    Game Upload manual : http://bit.ly/GGJ14Upload

    ライセンス関連の指示はスライドの9,10,14枚目をご覧ください.
    (英語でよく分からない場合は、会場運営者で日本語訳をつくっているので、そのうち出回ると思います。)

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  3. GGJ2014のゲームアップロード方法に関する参考訳です。
    http://www.slideshare.net/igda_jp/gupload-instructions-2014
    クリイティブコモンズについては、こちらのスライドp.9,10にリンクされているZipファイルを解凍後、licence.txtというファイルにサンプルが記されています。
    リエイティブ・コモンズ(licence.txt)は各国語に翻訳されていてそちらのクリエイティブ・コモンズをつけることも可能です。
    ただしクリエイティブ・コモンズジャパンが出しているのは非公式参考情報という位置づけなので、かならず英語版をつける必要があります。
    http://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/3.0/deed.ja

    問題は、他のライセンスでくばられている素材を使っている場合です。GGJではソースもCCライセンスをつけてアップロードするので,他のライセンスで配られた素材を勝手にCCライセンスをつけることは権利侵害になります.
    この場合は、p.14にあるようにサブディレクトリを掘り、誰々提供のクレジットや謝辞をつけたり、もともとの使用許諾や問い合わせ先を)licence.txtというファイルにしてつけるとよいでしょう。

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