2024年1月5日金曜日

Global Game Jam 2024 プレビュー: オフィスで,学校で,民家で,病院でゲーム開発

あけましておめでとうございます.
2024年1月の「令和6年能登半島地震」で被災された方々にお見舞い申し上げます.北陸地域は個人ゲーム開発に縁がある地域で,国内でもいちはやくゲームジャムを開催した石川県のGlobal Game Jam 2010 JAIST(北陸先端科学技術大学院大学)会場や,富山県魚津市の「UOZUゲームジャム」「デジタルからくり装置作りワークショップ」,名物にちなんだ『カニノケンカ』eスポーツイベントで知られる富山県射水市の「ToyamaGamersDay」と,ゲーム関係者がいくつもの足跡を残しており,無事を祈っています.
本記事では,1月末のGlobal Game Jam2024を展望します. 

 

コロナ禍から復活したGlobal Game Jam国内会場

世界同時多発ゲーム開発イベント,Global Game Jamが今年も開催される. Global Game JamはIGDA Education SIGが立ち上げたという歴史的経緯から,IGDA日本支部では日本語サイトをホストするとともに,本アカデミックSIGブログではGlobal Game Jamの情報を紹介してきた.その本ブログでは昨年のGGJ23報告で「対面会場が帰ってきた」と書いたが,今年はさらに全国各地の会場が充実しているので本ブログでも紹介したい.

GGJ24までの日程

GGJ24の日程を以下に示す(米国太平洋時間).
  • 6 November 2023: サイト登録受付開始
  • 4 December 2023: 参加者のサイト登録受付開始
  • 15 January 2024: サイト登録受付終了(予定)
  • 15 January - 19 January 2024: GGJ 直前週間(本部イベントが予定されている)
  • 20 January 2024: 全世界同時テーマ発表(Twitch配信)
  • 22 January 2024: GGJ開始.(会場ごとにこの週で48時間を使ってゲーム開発する)
  • 28 January 2024 - 正午(現地時間)に参加者のサイト登録受付終了
  • 28 January 2024 - 夕方5時(現地時間)までにゲームアップロード終了

参加心得

GGJでは,誰もが安心してゲーム開発ができる場を目指している.そのためにインクルージョン・ポリシーと行動規範を定めており,セクシズム,レイシズム,人種差別を含むあらゆる排除を容認していない.それらを含むゲームは削除される.また,開発中に許容されない行動の対象となったり,そのような行動を目撃したり,それらに関する懸念事項があったりした場合は通報することができる.そして会場運営者は許容されない行動をとったメンバーを排除することができる. こうした場作りのコードにみられるように,GGJは,初対面のメンバーとでも安心してゲーム開発ができることを強く意識している.こうしたコードは国内のゲームジャムにはあまり見られないので,忘れないようにしてほしい.

国内会場の紹介

以下では,国内の各会場を紹介する.IGDA日本の公式日本語情報とは別に,一言紹介を追加する.
沖縄会場
IGDAの学生チャプターであるIGDA琉球大学が主催する.学生主体だと数年でメンバーの入れ替わりが起こるが,その困難を乗り越えてきた.
奥多摩会場
奥多摩会場は秘境での開発をコンセプトとして今年で第3回を迎える.3回目ながら経験も豊富で,昨年のGGJ23ではチームの一つがGGJ終了後もボードゲームの開発を続け,Kickstarterで製品版の出資者を募って達成している.秘境の古民家でゲームを開発してグローバルに購入者を募るというギャップがすごい.
吉祥寺(ぴっくる)会場
主催は学生チーム対抗ゲームジャム2023を開催した有限会社ぴっくる.会場はオンラインセッションと武蔵野公会堂での週末オフライン開発とで構成される.まだ承認直後で,詳しい説明はこれから.
鹿児島会場
鹿児島のゲーム開発会社,アプリファクトリーはるniが主催する会場.本記事の執筆時点ではまだ承認直後で詳しい説明はこれからのようだ.
名古屋 名古ゲ部会場
名古ゲ部(旧名:名古屋ゲーム制作部)が主催するゲームジャム.GGJではあまり見られない一人での開発もOK.会場にはレトロPCも持ち込まれるようだ.
ヒューマンアカデミー会場(秋葉原)
総合学園ヒューマンアカデミー秋葉原校を会場に,第二言語英語も受け入れ,見学やテストプレイでの参加も歓迎するオープンな会場.
福岡会場
福岡会場は,過去には市長が開発中の会場を訪れるなどオープンな雰囲気だったが, 今回は基本的にオンラインでDiscord上で作業を行い,最終日だけは福岡市天神のエンジニアカフェで行うという,事前に48時間スケジュールを立てていない会場.
熊本会場
熊本会場は,事前にUnity勉強会を開いて資料も公開するなど,今年のGGJに向けて力をいれているようだ.
Let's Games! Tokyo(六本木会場)
以前はCode Chrysalis名義で開催されていた六本木会場は日本語&英語の両方で参加説明を書いている国際的な会場で,インディーゲーム開発者の集まるTokyo Indiesでも主催者が日本語と英語の両方で参加募集を呼びかけている(11月のTokyo Indies動画(01:36:40-01:42:05) https://www.twitch.tv/videos/1977976479 )
NekoLogic & C2 京都会場 [NEW]
1月になって承認された京都会場は英語表記のみ(日本語も受け入れ可能),インディーゲームスタジオが主催するインターナショナルな会場だ.
札幌会場
札幌は夏にSapporo Game Jam,冬にGlobal Game Jamを開催する日本屈指のゲームジャム熱狂地帯であり,GGJ24でも日本で1,2を争う参加者が集まると予想される.Global Game Jam 2011で北海道大学の学生がはじめた会場が地域社会に根付いてゲームジャムコミュニティが続いているのは素晴らしい. 昨年のGGJ2023では,高評価を得たプロトタイプがボードゲーム『ぼうけんのしょはきえてしまった!』として製品化された.
仙台会場
Global Game Jamの歴史で断続的に開催されてきた仙台会場だが,今回は企業オフィスで開催され,しかも札幌会場の事務局をつとめた企業が仙台で会場提供をする,という広域(mega-region)展開の形態をとっているのが注目される.IT産業は地域に閉じない広域産業の例として挙げられるが,ゲームがそれをリードしていくかもしれない.
福島会場 [NEW]
久しぶりの開催となる福島会場は,郡山市のWiZ専門学校で開催される.過去には東北地方唯一のGlobal Game Jam会場を開催した会場でもあり,東北地方でもゲームジャム会場が復活したことを印象づけている.
MyDearest 浅草橋会場 [NEW]
VRノベルゲームで知られるゲームスタジオMyDearestが会場となる浅草橋会場は,これまでにも「VR、XR、LookingGlass、ちょっと変わった普通?のゲーム」などポリシーを明確にしたり,NeosVRを使ってバーチャルリアリティー空間での開催に挑戦したりと,挑戦的な参加者募集を行ってきた.そしてGGJ24ではついにMyDearestメンバーのみの社内GGJ会場として参加している.会場時間も10:00 - 19:00と普通の会社勤務の時間帯だ.社員限定でGlobal Game Jamをやる場合,通常の社内ゲームジャムでは得られない海外ゲーマーへのプロモーションの経験を積んだり,海外会場とのグローバル開発体験が積めるが,どのような経験を目指しているのか,公開されるプロの作品を楽しみにしたい.
瀬戸内会場 in 香川
上記の札幌〜仙台会場について述べたように,Global Game Jam会場によって広域産業のつながりが見えることもある.そしてGlobal Game Jamの広域展開と言えばこの瀬戸内会場だろう.まず岡山Unity勉強会が岡山会場をたちあげ,広島Unity勉強会,そして四国の讃岐GameNと連携してきた.コロナ禍からいちはやくゲームジャム会場を開き(参考情報: IGDA日本ライトニングトーク),岡山Unity勉強会は開催100回を超え,これまでもゲームジャム事前勉強会を共同開催して資料も公開してきた(2022, 2023).
瀬戸内会場は開催形態もユニークで,GGJ20では真宗興正派 善照寺というお寺で開催されたり,地元香川県高松市の商店街で開かれたイベントにGGJ22発の作品が出展されるなど,地域社会に根ざしたGGJ会場の形を提示してきた.そして今年のGGJ24では,「GGJの日本会場では初めて「総合病院」で開催決定!2024年に医学とゲームの最先端が交わる場所が、この「香川県」で産まれます」という国内ゲームジャムの常識を塗りかえるコンセプトで瀬戸内地方内外から参加者を募集している.
瀬戸内会場 in 広島
上記の瀬戸内会場 in 香川は定員30名と限られており,広島にサテライト会場が開設されている.広島Unity勉強会を中心としながらも,小規模でも広域でのゲームジャムのもりあがりが期待される.
湘北短期大学(厚木)
湘北短期大学会場はGGJの国内会場の中でも古株の会場で,ゲームジャムの短期ゲーム開発を学校教育とうまく組み合わせてきた.これはこれはゲーム開発を教育にとりいれるだけでなく,施設利用を許可してくれる大学組織,そして会場責任者として毎年常駐する教員が勤め続けている大学でないとできないことだ.
東京工科大学(八王子)
最後に紹介する東京工科大学会場(八王子)は,Global Game Jamの国内会場の中でも最多の開催数を誇るゲームジャム拠点だ(参考資料: 大学プレスリリース「メディア学部が「グローバルゲームジャム」に14年連続参加」).とりわけ最初の年は,学生有志が開催前から特集番組配信を行い,それを見た水口さん平林さんが来校してゲリラ深夜番組を配信するというUSTEAMのライブランキングでトップ10位内に入るメディアイベントになっていたのは忘れ難い.今年も会場配信には注目したい.
東京工科大学会場は参加報告も多く,GTMF 2011で大前さんが,CEDEC 2012で後藤さん湊さん石川さんが,SEGA Tech Blogで石畑さんが,それぞれGGJ東京工科大学会場(および夏の福島ゲームジャム)で挑戦した試みとその成果を社内外に共有している.

国内会場の先に

ここまで,GGJ日本語情報サイトにはない補足情報を紹介した.参加する国内会場選びの参考にしてほしい.これらの国内会場に参加する以外にも,過去の台北会場や最近の京都コンピュータ学院(KCG)のように,日本から(日本語が通じる)海外会場に参加してグローバル開発に挑戦することも可能だ. 

 公式ウェブサイトには各種情報がまとめられているが,日本語では Official GGJ Discord の「Game Jam Discussion」から「日本語」のサーバに接続すると日本語での情報交換をすることもできる.

また,Xのハッシュタグ#GGJ, #GGJJP, #GGJ24 をつけた日本語ツイートはツイートまとめサイトでも誰でも編集できるかたちで随時まとめている.

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